まるで、熟した林檎のような恋でした。





触り心地よさそうな、栗色の髪。


芹沢先輩の名前とおんなじ碧色のヘアピンは、左サイドを華やかに飾り立てている。



「実はこのヘアピン、瑛美……あ、彼女のことなんだけど、瑛美が誕生日プレゼントでくれたやつなんだ」



さらっと。

本当に、さらっと。


聞き間違いかと疑いたくなるほど。



麻莉ちゃんには効果が絶大すぎる、爆弾が投下された。




「……か、のじょ……?」


受け止め切れていない、麻莉ちゃんの小さな独白に、



「またいつもの惚気かよ」


「ははん、羨ましーだろー」



更科先輩と芹沢先輩の、和気あいあいとした談笑が重なる。



2人は、これっぽっちも察していない。


私と麻莉ちゃんが驚愕と哀愁に、打ちひしがれていることに。





「……彼女、いたんですね」



静かに、笑顔が作られる。

ギシリ、と軋んでしまいそうなくらい、歪だ。


見た目はこんなにも完璧なのに、それがひと際傷を目立たせていた。