「昨日の昼休みに、世くんが、マネージャーが急用でいないって言っていたので」
……昨日の、昼休み?
嫌な予想が、脳を埋め尽くしていく。
「困ってるなら、私が手伝って助けたいって思ったんです」
ふにゃり、と。
頬をほころばせて。
笑う。
ようやく、望んだ笑顔が見れたのに、嬉しくない。
その笑顔は、誰を想ってのもの?
じわりじわり、熟れていく。
その様子を、昨日はもっと遠くから眺めていた。
『好きですよ?』
瞬間、すとん、とやけにあっさり理解できた。
「……そ、っか」
そうだったのか。
昨日の昼休みにりんごちゃんが喋ってた相手に覚えがあったのも、部活中に感じた既視感も、正体がやっとわかった。
全部わかっても、俺がやることは変わらない。
俺なりに精一杯頑張るだけだ。
深く蝕まれた心を、夕闇に忍ばせた。
――きみも苦しみながら、恋してる。