屋敷の曲がり角の所で全体は見えないが、良く見れば太い樹木は緑色だがコケが生えている様には見えなかった。
その樹木が呻き声の主だと瞬間的に理解すると、遠くに見える太い樹木が左右に大きく揺れて暴れ始める。
そして屋敷の角から見え隠れする黒い物体。
「ッ!!」
屋根から見下ろした巨大な黒バラのバケモノだと分かったが、こんな時に脚がすくんで動けなくなってしまった。
逃げなくちゃ!逃げなくちゃ!逃げなくちゃッ!!
俺の存在に気付けば、折笠さんの肩を突き裂いたイバラで、一突きにされてしまうだろう。
グウェェエエッ グウェェエエエ゛ッ
巨大な黒バラの動きが激しくなり、地面の揺れも大きくなる。
俺は思うように動かない脚のせいでバランスを崩してしまい、その場に尻餅をつく。