私は中央の玄関である二枚扉を目指した。 「住んでるとしたら、廃墟に勝手に住み着いてるって事ですよね……」 「それはそれで問題だけどね」 バラの紋章が彫られた木製の立派な扉をノックする。 だが、中から物音ひとつしない。 「留守なのかしら……」 ドアノブを動かしても、カギが掛かっていて開く事はなかった。 二宮は私の隣で辺りをキョロキョロと観察し始めた。 つまらなくなったのだろう。 怖がっていたのに、私から離れて庭に咲く黒バラをしゃがみ込んで見つめていた。