…なあ。お前だってさ、気が付いてないんだよ。俺だって叶わない想いを抱えて、身動き一つ取れない事実に。
俺が彼女に想い焦がれ惹かれている間に、彼女も俺以外の相手に想い焦がれ惹かれていた。
お互いが片思い。お互い叶わない想いを抱えている。
「もう少し、あと少しだけ出逢うのが早ければ…あの位置にいるのはあたしだったのかな。なぁんて…。」
そんな言葉をポツリ吐いてぎゅっと拳を握りしめている。
何時だって幸せそうに笑う彼女の想い人。俺から見てもあの、凛とした美しさを持つあの人がいるからこそ彼はいつまでも穏やかで優しい笑顔を魅せ続ける事が出来る。
お似合いの恋人。もうじき結婚するそうだ。


