仮に彼女に想いを打ち明けた所で、振り向いて貰える事もないだろうしきっと彼女は更に自分を責めるに違いない。
だから…俺だって言えやしない。
決して口にする事の出来ない想いを隠し、ハンドルを強く握りしめる。
ボロン と何かが膝の上に転がり落ちる。小さな箱だ。
「…? これは…」
それは、以前彼を乗せて送っていった時に忘れていった彼の煙草だった。中身を開けるとまだ数本残されている。
禁煙してからもう数年以上経っていたからライターなんてものは持ってなかったが、車に経常されている火を使い煙草に火をつける。
そう、特に意味のない行動だった。


