夢の中だけでも、彼女が幸せである事を願うしか出来ない自分自身に歯痒くなる。
長い黒髪を一つに纏め、邪魔にならないように眠る姿。その髪に指先を伸ばして触れる。
はらはらと指から零れていく黒糸に愛しさが次から次へと溢れだして止まらなくなる。
「…ねえ、由梨ちゃん。俺なら絶対に君の事を悲しませない自信があるよ。だから…」
“俺の事を見て”
…なんて言えたらどれだけ楽なのだろうか。
彼女がこうやって俺に打ち明けてくれるのだって、俺が抱く想いに気付きもしないし、先輩として強い信頼をしてくれているからだろう。
だからこそ「乗せてってください」の言葉からこんな関係が始まったのだ。


