「どうだ雫、気に入ったか?」


「うん!! とてもきれい……!!」


「そっか。俺もここ気に入ってるんだ。今はまだ海水が冷たいから遊べないけどな。……来年の夏にまた一緒に来るか?」


「もちろん! ……あっ」


「ん? どうした?」


そうだ、霰は3年生だ……。そして来年には大学生になる。


「霰、3月に卒業しちゃうんだよね……」


「……あぁ、そうだな。……大丈夫だ、もし告白とかされても断るし――」


「そうじゃなくて、……その……霰の近くにいられないのが不安で……」


私は最初は大きな声で話していたが、だんだん声は小さくなってしまった。


「……それじゃあさ、俺と2人で暮らそっか」


「……え? それって同居……って事だよね? ていうか、そもそも家はどうするの……??」


「大丈夫。家なら親父の別荘がある。それに俺の家族全員、雫と同居する事とか認めてくれてるし」


「そっか……それならずっと一緒にいられるね!」


そう言って私は霰の手を握った。


「……さて、そろそろ帰るか、雫」


気がつくと、もう日が暮れて星が空で瞬いていた。私達はさっき乗ってきた電車に乗り、それぞれの家に帰った。それから数ヶ月後の下旬の卒業式。奏は式が終わった後はすぐに相原先輩の所に行き、第2ボタンとサインを貰いに行って泣いていた。教室で携帯を弄っていると、クラスの女子が話しかけてきた。


「あれ? 星空さん、王子の所に行かないでいいの?」


「あっ、うん。待ち合わせしてるし……って、もう時間だ!」


私はガタッと椅子の音を立て、待ち合わせ場所の空き地に向かった。


「お待たせ、霰! ――きゃっ」


霰の方に駆け寄った瞬間、いきなり霰に前から抱きしめられた。


「……雫、お前に聞いてほしい事が1つあるんだ。聞いてくれるか?」


「え……? うん」


霰は私の両手を握り、真剣な瞳で見つめてきた。


「――雫が高校を卒業したら結婚しよう。一生幸せにさせる」


「っ!! 霰……っ!」


私は霰に抱きついた。……これって……、プロポーズ……!?


「雫、……俺と約束してくれるか?」


「うん!! もちろんだよ……!」


「おいおい雫、泣きすぎだって……。あとこれ、あげる」


そう言って私に渡してきたのは、この高校の制服についている金色のボタン。


「え、これって……」


「女子達に捕まって取られそうになったけど、『彼女にあげるからムリ』って言ったら納得して諦めてくれたぞ」


「ありがとう……!! 私、大切にするね!」


そう言って私は胸ポケットにしまい、霰にキスをした。


「……お、おぅ」