空を見上げて、月を描いて


 一番つらいのは自分だって、いつの頃からかそう思うようになって、忘れられた方の気持ちは考えなくなった。


 美月とイチと、新しく作った思い出があったから、それでいいっていつしか思うようになってた。


 一番つらいのは、誰なのか。


 たぶん今大事なのは、そういうことじゃないんだよな。


 ……きっと俺は、なにか忘れちゃいけないことを忘れたんだ。


 イチがあの日言ってた。


 『お前以外に助けてやりたいやつがもうひとりいる』


 その言葉が今さら頭の中を駆け巡った。


 “もうひとり”。


 美月以外の記憶がない俺。


 ほんの少しの小さな違和感。


 まだなにもわからないままだけど、イチともう一度会って話したいと思った。


 与えられるのが残酷な結末でも、きっとそれを知らないと進めないと思った。


 『奏汰のね、そうやって人の気持ちを考えられるところ、私は好きだなあ』


 いつか美月が俺にそう言ったのを思い出して、心臓が痛くなった。






 なにも知らないままでいることは、怖いことだと知った。


 いなくなった理由。


 なにかを伝えようとしたイチ。


 “親友”の言葉を信じられなくてどうする。


 なにが本当で間違いか、俺は知らない。


 けど俺は、一緒にいた時間をまず信じたい。


 美月がいなくなって3年目。


 今度はちゃんと“そういう意味”で覚悟して。


 信じて受け止めようと思った。


 もうすぐまた、あの季節がやってくる。


 寒くて冷たい、俺が事故に遭った日。