「どうする……って、難しい質問だな。なっちゃんはその女の子が亡くなってるかもしれないなんて、とりあえずは信じたくないんでしょ? けどさ……」
コーヒーの缶を強く握ったユキは言葉を区切って、痛いくらいに真っ直ぐな目で俺を見た。
「それって、誰かが救われる?」
救われないよね、ってユキは伏し目がちに笑った。
「現になっちゃんは体調良くないみたいだし。いろいろ考えて眠れないんでしょ? それに、もし仮にその子が本当に亡くなっていたんだとしたら、なっちゃんがそれを知らない、知ろうとしないっていうのは、その子にとってすごく悲しいことだと思うよ」
本当のことがわからないからこんなふうに言えるんだろうけど、と気まずそうに付け足した。
「確かに記憶を失って、友達にいきなり現実突きつけられたらなっちゃんも傷つくのわかるけど。でも、その友達はなっちゃんのためにこうしてくれたんでしょ?」
「うん……」
「“覚悟しろ”って、言ってくれてたんだよな? 絶対、なっちゃんのためだよ」
俺の、ため……。
「俺はなっちゃんじゃないし、その女の子でもないから本当のことなんてわからない。記憶がなくなった経験だってない。無責任なことはあまり言いたくないけど、なっちゃんはちゃんといろいろ知らなきゃいけないんだと思うよ」
俺だったら、怖いけど本当のこと知りたいって思う。
忘れた人たちのこと、ちゃんと思い出してあげなきゃって思うんじゃないかな。
ユキはそう言った。
……記憶を失ったばかりの頃、俺もそう思ってた。
もう忘れかけてた、そんなこと。



