空を見上げて、月を描いて


 ユキといると気が楽だけど、そう思うたびにイチの顔がちらついて、同時に思い出したくないことまで思い出すことになるのが、最近の悩みだったりする。


 思い出すことが増えれば、今まで固く閉ざしていた扉が緩くなるのも当然のことで、バイトが終わってシャワー浴びてる時とか、寝る前のふとした瞬間とか、いろいろ思い出して考え込むことが増えた。


 たぶん最近、そんなに眠れていない。


「ふあー……」


 大きな講堂での講義だから、みんなひっそり言葉を交わしていたりして雑音が多い。


 俺がでっかい欠伸をしたところで、誰も気に留めたりしない。


 中学の頃はたったそれだけのことで先生に注意されたりしたけど、そう考えると今のこの楽さは尋常じゃない。


 レジュメが配られるこの講義ではノートをとるやつはほとんどいなくて、俺もそのうちのひとり。


 隣のユキは例外で、どんな授業もしっかり真面目に受けている。


 見た目は割と派手な方で、へらへらしたバカっぽい犬みたいなのに。


 本当に人は見かけによらない。