空を見上げて、月を描いて


 結局あの後、お互いちゃんとした話しはできなくて、家に帰った。


 美月の携帯電話とネックレスを持って。


 自宅に着くと物知り顔した母さんが出迎えてくれて、知らなかったのは俺だけかよって、泣きたくなった。


『たぶんお前が想像してることは大方あってる。けどお前は、間違えたままだ』


 昔からよく、優しいとか、気が利くとか、そんなことを言われ続けてきた。


 それは、できるだけトラブルを避けたくて、自然と周りを観察する力がついただけ。


 わかんねーよ。


 美月のこと以外、覚えてなかったんだ。


 周りなんて、見えるわけない。


『こんなふうに言いたいわけじゃなかった』


『傷つけたいわけじゃない』


『俺には、お前以外に助けてやりたいやつがもうひとりいる』


『……ごめん』


 イチはドアから出る俺の背中にそう投げかけた。






 なにも知らないで過ごすことは幸せだった。


 なにが本当のことなのかわからないまま、今日もゆっくりと1日が終わっていく。


 “美月がもういないかもしれない”


 俺はまだ信じられないまま。


 また肌寒い季節がやってくる。


 美月が隣からいなくなって丸2年。


 ただ大学に行くだけの、長い長い1年間。