だけど、志水の質問に答えなくては。
ここで別れないよ、なんて答えるのは、きっと逃げに値する。
だから嫌でも考えないといけないんだ。
もし、凛音との関係が終わったら…。


その時、カツンという足音と共に、どこかふざけたような男の声が聞こえた。


「こんばんは。
お取り込み中失礼します。

相葉さん、そこで言葉に詰まっちゃ駄目でしょうよ。即答しないと。
僕には彼女との未来しか見えてないって。
いいんですよ、その女に優しさを向ける必要なんてない。
2人揃ってそんなキョトンとしないで下さいよ。
相葉さん、今の危機的状況はその志水という女が作り出したと言っても過言ではないんですよ」


突如として現れた男はそう喋った後、僕達に名刺を手渡した。


名前は阿部健太郎。最悪なことに、記者をやってる男だった。


ピリッとした空気が流れたこの空間で、阿部さんは僕と志水に有無も言わさず、ロビーの隅にあるテーブル席へと座らせた。
僕も気になったんだ。
この男はどうやら何かを知っているらしい。