夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~

見えてきたのは決して大きいとは言えないプールだ。
25メートルで4レーンしかない。
日差しから守る屋根もない小さなプール。
授業以外では、水泳部しか近寄ろうとしないのに、今日は沢山の人が集まっていた。
フェンスの周りにも沢山の人がいて、学校の人だけじゃなくて島の人たちもいる。


「え……?」


不思議に思いゆっくりと近付けば、心臓が止まるかもしれないと思うくらいに激しく脈を打つ。
誰かを囲む様に集まる人。

その中心にいたのは僕が会いたくて会いたくて仕方がなかった人。
その人は僕の方を向くとキラキラと輝いた笑顔を浮かべた。
でも直ぐに前を向いて、地面を蹴りあげてプールへと飛び込んだ。

美しく弧を描いて、水飛沫を弾かせながら飛び込むと、そのまま泳ぎ続けた。
驚くくらいの速さで、それでもってフォームも綺麗で。
僕はその泳ぎに釘付けになっていた。


「……」


言葉なんていらないほど。
その泳ぎは胸を弾ませて、感動をくれる。

まるで、6年前に見た、小さなキミの泳ぎを見ている様だった。
技術やスピードは勿論、今の方が高いけれど。
あの時と変わらない、水泳が大好きだって想いが詰まった泳ぎ。


「高瀬……さ……ん」


泳ぎを披露する人の名前を口に出せば涙が堪えられずに溢れ出てくる。
そんな僕の声が聞こえたかのようにキミは立ち上がった。
丁度、25メートルを泳ぎ切ったみたいだ。
その場から動けずに固まっていれば彼女はゆっくりとこちらを向いた。
視線が交じり合えば、クシャリと顔を緩めて、僕の大好きな笑顔をくれる。


「先生!!」


彼女の口が大きく開き、僕に向かって叫んだ。
それに応えたいのに、涙が邪魔をして声が出せない。

ぼやけた視界でも輝き続けるその笑顔は。
僕がずっと見たいと望んでいたモノだった。


「先生」


もう1度そう呼ぶとキミは水滴を散りばめながら走り出した。
太陽に反射して輝くキミの姿が何よりも美しくて。
僕は黙ったまま高瀬さんを受け入れた。