きつく抱きしめると、心も抱きしめ返してくれる。

それが嬉しくて、さらに腕に力を込めた。



「我慢なんて…しなくて、いいのにっ…」



…え?



「晴ちゃんがわたしを大切にしてくれてるのなんて…もう充分わかってるもん…」



…っ、なんでそんな、可愛いこと言うかな…。

心はようやく俺と目を合わせたと思えば、上目遣いで見つめてくる。



「晴ちゃんがしたいこと、全部していいんだよ…?」



首を傾げてそう言われ、俺は可愛さ余って苦しいくらいに抱きしめた。



「やばい…このまま文化祭サボりたい…」



そんなこと言われたら…どうにかしてやりたくなる。


はぁ…好きだ…愛しい…。



心の底からそんな感情たちが湧き上がって、どうしようもない。

ていうか心がそういうのに興味を持ってくれたということも嬉しくて、そして俺を受け入れてくれるつもりだということにも、歓喜で震えそうだ。


今すぐサボって連れ去ってしまいたい衝動に駆られる俺だったが、真面目な心がそんなことを許すはずもない。



「そ、それはダメだよ…」



「わたしたち接客係なんだし…」と、おろおろしながら呟いた。



「じゃあ、心からキスして」

「へっ…!?」

「してくれたら…文化祭の間は我慢する」

「ぶ、文化祭の間…?」

「文化祭終わったら…その後は離してやんない」



そんな可愛いこと言われて、俺も我慢の限界なんで…。



「ほら、早く。きーす…」



口をパクパクしながら、顔を真っ赤にする心。

恥ずかしくて出来ないのか、完全に俯いてしまった心の顎を持ち上げた。



「出来ないなら、俺からしてあげる…」



言っとくけど…文化祭終わったら、心からキスしてもらうからな…


耳元でそう囁いて、俺は目の前の唇にキスを落とした。





「ゆ、誘惑作戦…成功したかな…?」

「誘惑作戦?なんだそれ」

「え、えっと…春野さんとアヤカちゃんに、アドバイスもらって…」

「…またあのバカ女の入れ知恵かよ…まあ今回は、感謝してやらなくもない」



結局、俺が心の分まで客を集めると断言し、心は裏方に回ってもらうことになった。

無事売り上げは1位となり、なんとか丸く収まった。


文化祭の後の話はーー俺と心だけの秘密。




【番外編】END



(ここまで読んでくださり、ありがとうございます!続編執筆予定です!)