「晴、ちゃん…」

「ほら、もう家入れって。また明日な?」



心の家の前まで送ると、名残惜しそうに俺を見つめてくる。

バカっ…俺だって、離れたくないんだって…。


でも、これ以上一緒にいたら、確実に狼になってしまう自信しかないから。


心は、「バイバイ…」と小さな声で言って、家に入っていった。



ーー〜っ、はぁ…。



全身の力が抜け、その場にしゃがみ込んだ。



よく我慢したと、自分を大いに褒めてやりたい。

これ、俺じゃなかったら絶対手出してたからな?


もうほんとに…あいつのかわいさはどこからきてんの…?



大事に、したいのに。

大事に大事にして、ゆっくり進んで行きたいのに…


最近、自分の理性がグラグラで、隙あらば手を出してしまいそうになる。


心は純粋なんだから、俺のそういう欲を、押し付けたくはない。


心にもちゃんと、俺を求めてもらってから、そういうことは……と、思ってるから。


思ってる、けど…



「あのかわいさは、反則だろ…」



毎日のように、心の可愛さに頭を抱えていた。

まだ付き合って一ヶ月しか経ってないんだ。

今まで何年も我慢してきただろ?

できていただろ?


静まれ…俺…ッ。


髪をかきあげて、俺は盛大なため息を落とした。