「知ってるよ。昨日、掃除してたときにたまたま見かけたから」



「え、掃除? 美月って昨日、掃除の当番だったっけ?」



「俺が頼んだんだよ」



梓の質問に答えようとしたとき、ふいにあたしの背後からそんな言葉が降ってきた。


あたしは会話に横入りしてきた人物の方を振り返る。



「あ、石原くん」


「おっす、葉山。昨日はありがとな!」


「いえいえ。昨日、大丈夫だった?」


「おう!葉山が掃除かわってくれたおかげで、妹の歯医者間に合ったわ!」



彼は石原 亮(いしはら りょう)。


高校1年生のときから同じクラスで、なにかと仲がいい。


石原くんはクラスでもムードメーカーみたいな存在で、男女問わず人気の生徒だ。


そのせいもあってか、委員長とかも任されやすいけど、お母さんが体が弱く、きょうだいも多いから家のことが結構大変みたい。