目を逸らそうとした瞬間に、目があって市ノ瀬くんは大きく手を振った。
恥ずかしいけど、見てしまったのはわたしなのであって、責任を取るように小さく手を振ってから俯いた。
「市ノ瀬?」
杏奈が言う。
「うん」
「ほら絶対さっきのは、あっちが気づいてなかっただけだよ」と得意気に言う。
「かなぁ?」
「でもいい気分じゃないのー?これだけ人がいるのに自分だけに手を振ってもらえるのって、特別な感じもするでしょ?」
「特別って、たまたま目あったからだよ」
「それが特別なんだよ」と、笑った。
「つか羽麗もちょっと意識してるんじゃん?」
「し……してないよ」
「じゃないと目合わないから」と、すかした顔で、からかってくる。
先生に「おしゃべり」と注意され壮行式の挨拶が始まってしまった。



