市ノ瀬くんは、ほらね、と笑った。


「なんかさ、どんどん嫌な奴になってくね、俺。なんでだろ。ただ羽麗ちゃんといたいだけなのに。どんどんどんどん嫌な奴になってる。

それでもいいと思ってたんだ。ううん。違う。言い聞かせてたんだ。

でもやっぱりさ、これでいい、これでいいって言い聞かせながら一緒にいるのって、けっこーきついよね。

羽麗ちゃんもそうでしょ?」


「……え?」


「俺と付き合って良かったんだって、言い聞かせてない?」


「ごめんね。はじめの頃は、少し……思った」


そっかと、背もたれに背中を預け、空を見上げるように視線をあげた。


「もう自由になっていいんだよ」と、わたしを見た。


「自由に、なって?」


「言ったでしょ? 俺、一年に三回くらい勘がいいときあるって。今日たぶんその日」


「……」


「好きなんでしょ?隼人のこと」