「あ。羽麗ちゃーん」と、体操着で体育館に向かう彼女に手を振った。二階のベランダから。


それに気が付いて一瞬顔をあげた。少し笑ったような困ったような顔に見えた。


ああ。どうしてクラスが離れているんだろう。


どうして部活はこんなに休みがないんだろう。


どうして彼女はこんなにも遠いのだろう。










廊下や購買部で会うこの時間って、本当に貴重だったりするから、見かける度に、声をすかさずかける。


友達に「お前、必死だなー」と呆れられ、そして「追いかけて追いかけて振られてしまえ」と、彼女いない歴=年齢の友達に呪いをかけられる始末。


「今日、一緒に帰れる?」


「ごめんね。今日はちょっと用事があるんだ」


だから、水曜日の部活休みという時間を俺は逃したくなく、毎週毎週がっついて誘うんだ。