何かに気を取られた油断した顔、フェイントをかけ抜かす。そのままシュートを決めた。バスケットゴールのネットが揺れる。市ノ瀬に言った。


「付き合ってたよ」


「なんだよ。それ、バカ」と、ボールを拾ってまた俺に投げつけた。そのまま立ち止まって言った。


「なんだよって仕方ないじゃん。本当のことだし」


「まじかまじかまじかまじか」


「好きなんでしょ?」


「はっ?」


「高塚のこと。二人きりにさせてなんて俺に言うくらいだし」


今度は市ノ瀬が俺の持っていたボールを奪い取った。


今までやる気もなかったくせに、急にひとりコートを思い切り走りだして、レイアップシュートを決めた。


振り返って言った。


「俺は好きだけど。隼人は?」