警部とは、警視庁の警察官で、藤崎 宗吾(ふじさき そうご)。若くして警部になった、いわゆるキャリアで、美夢の実の兄だ。
葵は度々、宗吾からの依頼で警察の捜査に協力している。
宗吾からしてみれば、葵は妹の美夢の幼なじみで、弟みたいな存在だったが、ある事件をきっかけに、葵の頭の良さを目の当たりにた。
それ以降、葵には度々、難事件の捜査協力を求めて来るようになり、現在の関係に至っている。
葵が大学で有名なもう一つの理由がこれにあたる。
葵は今回も事件の依頼だと思い、不謹慎ながらも少し胸が踊った。
これで退屈しのぎになると…。
だか、葵の踊る胸を鎮めるように、美夢は嬉しそうに首を横に振った。
「違うよ。楽しいものだよ」
そう言って、美夢は葵に一枚のチケットを手渡した。
葵は受け取ったチケットを、まじまじと観察する。
チケットには『豪華クルーザー!一週間の夢の旅!』と、記載されている。
集合日時は、三日後の午前十一時となっている。
「何だ、これは?」
葵は美夢にチケットを右手でヒラヒラさせて聞いた。
「お兄ちゃんが、葵と行って来いって。葵…、あんた、どうせ暇なんでしょ?本当はお兄ちゃんと行く予定だったんだけど、仕事が入ったみたいで…」
葵少し考えて、美夢に言った。
「ふむ…、成程。普段捜査に協力している僕に対しての、警部殿からのささやかなお礼と言ったところか…」
「まぁ、そう言うこと…。お兄ちゃん、葵には結構感謝してんのよ…。ねぇ、もちろん行くよね?」
美夢は華やかであろう夏休みの予定ができた事に対してだろうか、期待で一杯といった表情をしている。
