美夢は葵がつけっぱなしにしている、テレビを見て呟いた。
「明るいニュース…、最近ないね…」

葵は自分のコーヒーを一口飲み、仕方ないといった表情で、美夢に相槌をうった。
「ああ…」

テレビの報道番組は、世界情勢の特集を専門家を交えて議論している。
内容は、内乱や、テロといった所だ。

美夢は葵の表情と、相槌が気に入らなかったのか、葵につっかかった。
「冷めてるのね…、遠い国の話だし、実感わかないよね…」

葵は表情を変える事なく言った。
「ああ…。実感もわかないし、人類の歴史を振り返ってみても、大小問わず争いのない時代はないからね…。民族間の思想の違いや…、いや、根本的に言えば、人はそれぞれ一人一人、人格が異なるからね…、互いの事を100%理解するのは不可能に等しい」

美夢は呆れぎみに言った。
「あっ、そう…。まぁ、そう言うと思ったけどね…。聞いた私が馬鹿だった…」

呆れた美夢を不思議そうに眺めながら、葵は言った。
「何だ?美夢が話を振ってきたのだろう?もういいのか?」

「私…、社会問題の話をしに来た訳じゃないし…」

葵は自身の髪を、ぐしゃぐしゃしながら言った。
「そうだったな。僕に渡したい物があるんだったな。何だ?また警部殿から事件の資料でも預かって来たのか?」