choice 01


「これが九条氏の言っていた、医務室か…」

島の九時の方向にある、外観の地味なコンクリートの建物の前に立って、有紀が言った。

葵が言った。
「さっそく中を確認しましょう」

最初に部屋に入った時ほどの緊張感はないが、三人は警戒は怠らずにいる。

部屋は明るい…みた感じは、学校の保健室といった感じか…ベッドに机、椅子、それにガラス扉の付いた棚がある。

棚の中には消毒薬や、包帯、コットンなどが並べられている。

歩が言った。
「九時の言うように、医務室だな…」

確かにいたって変わった様子は無いが、葵が奥を指差し言った。
「扉があります…九条さんの言っていた実験室では?」

有紀が奥に行き扉を開けた。

有紀は中を確認し、葵と歩に「来てみろ」と促した。

歩は中を確認して言った。
「実験室ってよりは…オペ室だな」

部屋の中央のベッドに行き、その側にあるワゴンにある器具などを確認している。

「メスや吸引気、ピンセットなどもありますねぇ」

医務室にあったような棚を物色しながら有紀が言った。
「実験室と言った九条氏の言葉も、あながち間違いではなさそうだ…来てみろ…」

有紀に呼ばれて二人は棚に行き、並べられている物を見てみた。

葵が言った。
「厄介ですね…」

葵が厄介と言うように棚には、硫酸を初め…様々な劇薬が並べられている。

葵が言った。
「硫酸に水酸化ナトリウムに、フェノールどれも規制のある劇薬です…」

有紀が言った。
「ああ…医薬品医療機器法…薬事法で規制されている物だ…」

すると有紀はシャツの胸ポケットから黒のマーカーを取り出して、薬品の入ったビンなど一つ一つに、線引きし印を付けていった。

「これで薬品が使われたら、わかるだろう」
薬品に印をを付けている有紀をよそに、歩はなにか感慨深い表情をしている。

それを気にした葵が言った。
「どうしました…歩さん?少し疲れましたか?」

「いや、そういう訳じゃないんだけど…」

「嫌なのだろう…この場所が、この独特の空気が…」
印をつけ終えた有紀が言った。

「どういう事です?」
葵の問いかけに答える事なく有紀は言った。
「さぁ、出よう…ここにはもう用はないだろ?」

葵は歩の表情を察してこれ以上は深追いしなかった。