しばらく葵、歩、美夢の三人で話していると、九条が甲板にやって来た。

「君達…船長が呼んでいるぞ。シアタールームに来て欲しいようだ」

九条は山村船長の代わりに三人を呼びに来たようだ。

九条を加えて四人で甲板からパーティールームに戻ったら、他の乗客の姿は既になく、シアタールームへ向かったようだ。

シアタールームは最初にパーティールームの入口の、逆側の扉を出た通路の奥に有るようだ。

シアタールームへの道中に葵は呟いた。
「クルーザーと言うより、客船ですね」

葵の言うように、パーティールームにシアタールーム、客室10室に、スタッフルームに厨房…。
クルーザーと言うより、小型客室だ。

九条も葵に賛同した。
「葵君の言う通りだね…僕もクルーザーは所有しているが…、ここまで豪華ではないからね」

九条もクルーザーを所有してるようだ。
流石、有名な実業家だ。

四人がシアタールームに到着すると、船長の山村、助手の椿が出迎えてくれた。

シアタールームはそんなには広くなく、席も15~16席程で、正面には大型の液晶モニターが備え付けてある。

遅れてきた四人が空いている席に座るのを確認し、船長の山村が話始めた。

「皆様、お楽しみの最中にお集まり頂いて、恐縮です」

山村と椿は皆に向かってお辞儀し、再び山村は話始めた。

「これから皆様に御覧頂きますのは、オーナーからのメッセージPVです。お時間は取らせませんので、しばし御覧下さい」

そう言うと、山村と椿も皆に一礼し、空いている席に座った。

少し時間が経つと、部屋の明かりが消え、部屋が真っ暗になる。

「どんなPVかなぁ?」

「愛美!静に!」

部屋は暗いが、愛美と容子のやり取りだと、すぐにわかる。

落ち着きのない愛美と、それを落ち着かす容子…、この二人もなんだかんだで、バランスがとれたコンビだ。

すると、巨大モニターにメッセージらしき物が表れた。