呆れ気味の光一に美夢は尋ねた。
「娘さんがいるんですか?」

光一は美夢に答えた。
「うむ、24歳になる娘が一人な…。茶道の修行がまだまだ足らねと言うのに…ふらふらしおって」

娘の愚痴を言い出した光一を見て、サキは言った。
「あらあら…あなたったら、こんな所でまで亜美(あみ)の愚痴を言っても、皆さんに迷惑ですよ」

美夢はサキに尋ねた。
「亜美さんって言うんですか?」

サキは笑顔で美夢に返す。
「ええ…一人娘よ。こうは言ってもこの人娘には甘いのよ」

すかさず光一は反論する。
「何を言うか!あいつには早く婿を見つけさせて、家業を継いでもらわねば…」

酔っ払った愛美が、光一の反論を遮る。
「年頃の女の子が、修行なんかやってられるかっての!」

容子が愛美を抑える。
「愛美っ!失礼だってば!」

光一をなだめるサキに、愛美のフォローに追われる容子…それに上手く溶け込む美夢…。

ワイワイガヤガヤとやっているが、楽しそうだ。

そんな光景を少し離れた席から見ていた、葵は一人呟いた。
「ふむ…、やはりコーヒー6の牛乳4の割合に、シロップ三つだな」

葵は自分で作ったアイスカフェラテを堪能している。

そして隣に座っている、専門学生の順平に言った。
「君もいかがです?順平君。よかっら作りますよ」

順平は苦笑いしながら言った。
「ありがとうございます…。でも、遠慮します。俺…無糖派なんで…。葵さん甘党っすか?」

シロップ三つはかなり甘いが、順平の苦笑いを気にする事なく、葵は言った。
「ええ…、甘い物を摂取していないと、僕の場合…落ち着かないので…、軽い中毒症状です」

「ははは…、三つはさすがに多いっすよね…」

「よく言われます…。あっ、それと僕の事は、さん付けで呼ばなくて結構ですよ…、歳も一つしか違いませんからね」