「ギャハハッ でさ、」
「マジで? 笑えるわ〜」

なんで掃除を真面目にやらないのだろう。
邪魔で邪魔で仕方がない。

掃除をやらないのなら教室から出ろ。
掃除をしたくないのならさっさと帰れ。
それかさっさと部活に行けばいい。
そこに居られても困るんだ。
掃除の邪魔だから。

「邪魔。さっさと出て行って」
「……チッ 行こうぜ、あかり」
「は〜いっ ごめんなさいねえ、掃除の鬼さん」

舌打ちする位ならさっさと行け。
そして女子、お前も掃除係だろうが。

「はあ……人間って汚らわしいな」
「ブフォッ 厨二病かよ。真白ちゃん」
「うるさいよ、美紅。ちゃん付けやめろ」

君の名前の方が厨二病っぽいんじゃないかな。
あれか。キラキラネームというものか。
ただの頭の痛い方が付けた名前だと思うが。
まあ、アニメキャラとかではないだけマシか…

そして『ちゃん』を付けるな。
鳥肌が立つだろうが。

「その名前で呼ぶな」
「はいはい。ごめんごめん」
「まず声に抑揚をつけろ」

抑揚をつけろと言われても、難しいんだよ。
そして掃除の鬼ってなんだ。掃除の鬼って。

「私には掃除の鬼と呼ばれる理由が」
「流石、無自覚ド天然毒舌合理主義ゲス女」
「そこまで言うか? それに天然ではない」

天然というものは、あれだろう?
告白されても「どこに行くの?」と言うのだろう?
ふっ 私はそんなことなどしない。
フラグなんて、全てこの手でへし折ってやる。

「……流石厨二病」
「誰がだ、誰が。私は厨二病ではない」
「必殺技とか言っていないけど、厨二臭い」
「おい」

私は別に厨二病ではない。
ただの合理主義でリアリストなだけだ。
叶うはずもない夢を追い求めて、
なんの意味になるのやら。
夢を見るのなら叶う範囲内にすればいいのに。

「お前は諦めるのが早すぎんだよ」
「無駄な悪足掻きに意味があるのか?」
「はあ……お前、ほんとアホ」

そう言って美紅は私の頭を鷲掴みにした。
痛い。髪が抜けてしまうだろう。
そして髪を弄ぶな。ナチュラルに抜くな。

「髪を抜くな。禿げる」
「いっそ禿げろ」
「流石に酷いと思うのだが」
「お前の数少ない長所を消してやる」

この髪のどこが長所なんだ。
美紅の言うことの意味が分からない。
ボサボサで寝癖を直すことすらしない髪が?

「ブラウンに黒が混じってて綺麗だよな」
「どこがだ。私は黒髪がいいんだ」
「黙れこの黒髪好き」
「黒髪長髪の和風美人とか、最高だろう?」

私は和風美人を見るのが好きだ。
着物や浴衣、巫女服も作務衣も好きだ。
和服は茶髪よりも黒髪の方が似合うだろう。
いっそ黒染めをしたいのだが……

「はあ……染料の臭いで吐かなければ…」
「そのままでいいだろ。数少ない長所だし」
「君が私のことをどう思っているか分かった」
「流石鈍感。よっ ガン見していても気づかずにゲームをし続けるアホ」
「褒めていないだろ。喧嘩売ってるだろ」

今日も私達は平和である。
平和ほど、どうでもいいことはない。
トラブルもお断りだがな。