恋って何?

好きの違いがわたしにはよく理解できない。


友達が好き。家族が好き。

それと何が違うっていうの?


わたしはただ、碧人くんの側に居たいだけなの。

この気持ちを恋とは呼ばないでしょう?


ちらりと隣に立つ碧人くんを見ると、左耳に透明のピアスが付いていた。

何も付けずに放置していると穴が塞がってしまうらしいから、代わりのピアスを付けているんだと思う。

それって、あの青色のピアスは付けれなくても、穴は塞ぎたくないってことだよね?

いつか付けれる日が来たときのために、残しておきたいのかな。


いつか碧人くんがあのピアスを付ける日が来るとしたら、きっとそれは記憶を取り戻した時。


もしも記憶が戻ったら、今まで通りわたしは隣に居られるんだろうか。

ふと、そんな考えが頭に浮かぶ。

嫌だな……。


しかし、そんな不安を口にできるはずはなく、「体育祭頑張ろうね」と寂しさを押し殺して笑うしかなかった。


どんなに複雑な想いを抱えたままでも、月日は流れるのを待ってくれない。

わたしを置いてけぼりにはしてくれない。


運命が変わる予感がする体育祭は、すぐそこまで迫ってきていた。