今のは日野くんの声?
隠れて姿は見えないけれど、透き通るような綺麗な声の持ち主を、わたしは日野くん以外に知らない。
でも、綺麗な声には似合わない言葉を言っていたし……違うかな。
わたしの知っている日野くんは、超がつくほど優しかったもの。
「聞こえなかったのか?俺は目障りだと言ったんだ」
やっぱり、日野くんだ。
綺麗な声と言葉が全然合ってない。
僅かな隙間から見えた日野くんの顔は苛立ちに満ちていて、周りに居た人たちの体を一気に凍りつかせた。
「いっ、行こう」
「うん……」
パタパタと離れて行く人達に見向きもせず、日野くんはぼんやり窓の外を眺めている。



