「先生、ちょっといいですか?」
音楽室に顔を出してすぐに声をかけてきたのは、伊東と同じパートで副部長を務めている九条聡だった。
ふわっとした色素のうすい髪、明るい性格で後輩からも大人気、伊東ともやけに仲がいい。
はじめ、二人が話しているのを見て、二人は付き合ってるのかと落ち込んだものだ。
あとから、二人の後輩である岡部なつきから、あの二人はそういう関係ではないと聞いた。
「あの二人は付き合うとかじゃないんです。
けど、もも先輩が部長をやっていられるのは九条先輩がいるからだって、もも先輩は言ってました」
付き合うとかじゃないなら、なんなのかと聞きたかったが聞けなかった。