「くしゅん!」
彼女がくしゃみをして、少し寒そうに自分を掻き抱いた。
「湯冷めしちゃった……もう一回入ってこようかな?」
「あっそうだ! 僕も風呂入る途中だったんだ……」
僕は残念だけど、ここが別れ時かなって思った。
遠いところに住む人。
あんまり夢は見ないほうがいいな。
今、この時間だけでも素敵な時間を送れたし、それでいいよな。
「それじゃあね! 楽しかったです!」
僕は思いを振り切るように「男湯」ののれんを、今日はいったい何回目なのかわからなくなってしまったのれんをくぐろうとした。
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