「ふぁーあ…冬休みなんてあっという間よね」


三学期の始まりの始業式。由愛は大きなあくびをして机に肘をついた。

あれから中間、期末テストが終るとすぐに冬休みになり…お正月も終わってあっという間に時が過ぎていた。





「亜香莉は冬休み何してたのー?」


ハンドクリームを塗る泉が何気なく私に聞いた。



「ほとんど家にいたけど…たまに悠生とデートしたり」

「ほーぅ、ラブラブですな~」

「羨ましい!」


由愛と海音が顔を見合わせてキャッキャとはしゃぎ、私はそれを見て顔を赤くした。



学校生活と生徒会、そして悠生との付き合いも順調で毎日が充実していた。冬休みも悠生は連絡をくれたりたまに会ってくれて、一言で言うと幸せな日々を送っている。





「亜香莉」


すると後ろから頭をコツンと叩かれて、振り向くと悠生がいて私を手招きして呼ぶ。




「ちょっと行って来るね」

「はいはい。同じ学校に彼氏がいるっていいよね~」

「朝からお熱いよ全く~」


友達に冷やかされながら私は「うるさいな!」と言い返す。親友達は悠生と両思いになった事を報告した時、泣いて喜んでくれてしばらくは「良かったね、本当に良かったね」と言ってくれたのに今ではこんなふうに冷かされてばかりだ。

そんな事を思いながら悠生と教室の端にやって来ると、悠生はカバンから本を出して私に差し出す。





「これ。お母さんに返しといて」

「ああ、この前借りたやつね」

「じゃ」


悠生は素っ気なくそう言うと自分の席に行ってしまい、私は本を手にしながらポツンとその場に佇む。



それだけ…?

付き合ってるんだしもうちょっと会話があっても良くない?