「それにしても…こんな家にお医者さんを呼ぶなんて、一柳くんて相当なお金持ちかしらね」

「うーん…」


確かにそれは謎。しかもなんか自分の専属とかなんとかって言ってたような…?

どーでもいいけど、気になるは気になる。





「ま、何はともあれあんたの熱が下がって良かったわよ」


そう言って立ち上がるお母さんは、食べ終わったうどんの器を持ってキッチンへ向かい流し台に置いた。

お母さんは洗い物を始め水道から水が流れる音を聞きながら、考えるのは一柳くんのこと…



あいつの登場でなんか色々と調子狂うな…

明日学校へ行くのもなんか気が乗らないかも。









翌日



「亜香莉~おはよ!体調大丈夫?」

「昨日は亜香莉がいなくてつまんなかったー」


朝学校へ行くと、先に登校していた泉と由愛が私を見るなり駆け寄って抱きついてきた。




「泉~由愛~」


1日会わなかっただけなのに、すごく長い期間会えなかった気がする…

昨日は男子と絡み過ぎて1人で心細かったんだよー!友達が側にいないだけであんなに不安だなんて…

私って…やっぱり男慣れしてないんだな。





「ぁ…」


3人でじゃれていると、自分の席に座って静かに本を読む一柳くんが目に止まる。

昨日あんな事があったのに…一柳くんはこっちをチラリとも見ることなく、手のひらサイズの本を読んでいた。



胸がチクリと痛むのは何故だろう…

多分一柳くんには、私が学校に登校したかとすら気づいてないよね。


どうしたんだろ私…

こんな気持ちは初めてだよ…






「亜香莉?どーしたの?」

「えっ…」


ぼんやりと一柳くんを見ていたら、泉が不思議そうな顔をして私の肩を叩いて呼ぶ。




「まだ時間あるから売店でジュース買いに行こうよ!」

「うん」


私は一柳くんから目をそらして、泉と由愛に手を引かれながら売店へ向かった。





2人には昨日の出来事を話さなかった…

なんとなく話せなかった…



まだ…

私だけの秘密にしておきたかったから…