「ぁ…」


翌日。いつもより少し早めに家を出て学校に向かうと、ちょうど悠生に行き会った。




「よ」

「お、おはよ」


普通にしてようと思えば思う程いつもの自分から遠ざかる。ドキドキして悠生の顔を直視出来ない…




「昨日は遅くまで悪かったな」

「ううん、お母さんも喜んでたよ。またおいでってさ」

「そうする。借りた本返すついでにな」

「また借りたの?」

「今回は2冊だけ」


「本当に好きだね~」とクスクス笑う私。いつもの2人に戻れた…こんなに嬉しいことはない。




「今日のHRで文化祭の出し物決めるから、俺が仕切るからお前は書記やってくれよ。お願いだから漢字間違えるなよ」

「だ、大丈夫だよ!任せて!」


多少自信はなかったが胸をポンと叩いて見せると、悠生はクスっと笑い「頼むぞ」と言って私の頬を軽くつねった。

目の前にある学校行事を生徒会として頑張って成功させないとね。恋はそれからかな…?それに悠生は時間が欲しいって言ってたし…

私は間近に迫った文化祭と悠生との微妙な距離にドキドキワクワクしていた。


そして一ヶ月があっという間に過ぎ、文化祭の前の日。私達は前日の今日は学校に泊まりがけで作業することを許され、生徒達は夜中まで各クラスで明日の準備に追われていた。

私はというと…生徒会とクラスを行き来してヘトヘトになっていた。





「亜香莉」


体育館で照明の調整をしていると悠生が声をかけてきて、Tシャツに下はジャージ姿で腕の引き締まった筋肉にドキッとしてしまう…




「どうしたの?」

「後は田村に頼んだから休憩していいぞ」

「本当?」


私は田村くんに仕事を引き継いだ後で、悠生と体育館の近くにある自販機で飲み物を買い人通りの少ない廊下に並んで腰を下ろした。