生徒会長が私を好きな理由

物足りないように言って手に持っていた本を戻すと、私と一柳くんは図書室を出てまた廊下を並んで歩く。

とっても素晴らしい図書室だったのに…嫌がらせされた。本を人の頭に落とすなんて最低!




「…ん?」


頭をさすりながら胸の中でぶつぶつ文句を言っていると、隣にいる一柳くんが私をじっと見つめて来た。不思議に思っていると…




「…ぷ」

「何がおかしいの!?」


思い出したように吹き出す一柳くんに、私はすぐに突っ込む。どうせ本を落とされたから笑ってるんでしょ?はいはい。



「いやごめん。笑ってる場合じゃないか…済まない。まさか本を落とされるとは思ってなかったから阻止出来なかった」


思いがけない一柳くんの言葉に、私は足を止めてすぐにフォローする。





「そんな…一柳くんのせいじゃないよ」

「いや俺のせいだ。短時間でお前の側を離れずにいれば大丈夫だと思ったのにそれでもダメか…やっぱりお前は岩田と車で待たせるべきだったかな」

「え?」


そう言って難しい顔をする一柳くんに、私は疑問を覚えた。今並べた言葉を頭の中で繋げてみても私の中では答えが出ない。




「…どういう事?」


ストレートに聞いてみると、一柳くんは私を真っ直ぐ見て少し言いにくそうに答えた。





「この学校は終わってる。皆歪んでいる生徒ばかりだ…だからうかつに他校の人間がうろうろするのは危険なんだよ」


それを聞いて驚いた私はすぐに言葉が出て来なかった。


終わってる?歪んでる?

危険…?


こんな素敵な学校に全部似つかわしい言葉ばかりで、すぐには信じられなかった。しかしこれから一柳くんから聞く話によって段々とそれが事実に変わることになる。





「さっきも言ったがここは裕福な金持ちが集まるセレブ校。皆何不自由なく育ち苦労もせずわがまま放題育ってきた連中ばかり…そんな奴らが高校生にでもなればやる事は全て歪んだ行動ばかりだ。いじめや軽犯罪、豪楽…ろくなものじゃない」

「そうなの…」

「この学校では日常的に何かしらの問題が起きている。それは小さいものから大きいものまで様々だが、金が有り余っている者が行う事はどれもクレイジー過ぎる事だ。ここでは弱い物は生き残れない…強くなるしかない弱肉強食の世界なんだよ」


私は内心ショックを受けていた。もっとキラキラしたものかと思っていた白百合清蘭学園は想像をいろんな意味で超えるものだった。




「俺は必死で正気を保つ為に必要以上に勉強に打ち込み、エスカレーター式のこの学園生活を小学生から送って来た。気の休まる時間は自宅と読者くらいしかない…学校なんて好きじゃなかったし人と関わるのも嫌いだった。でもつくば高校に行って変わったんだ…」


一柳くんは廊下の窓の外を眺めながら、固かった表情を崩し柔らかい顔つきになっていた。




「つくば高校に行って生徒会に入って…お前達と会って…他の生徒とも触れ合って…少し考えが変わった。お前達とここの人間は全然違う。歪んでいる生徒なんていないし皆純粋でいい奴だ…」

「一柳くん…」


そんなふうに思ってたんだ…私はてっきり…本当は白学の方がいいと思ってるのかと…




「だから俺は…」


すると私を見つめ何かを言おうとしていた一柳くんの目線が、私の少し後ろに移った瞬間…






びしゃっっ



「ひゃっ!」