「え?」
「おめぇの身体から、キンギョの毒を抜いて、まともな人間にしてくれるんだとさ。堅気の人間の気まぐれってのも、ハタ迷惑だが、ま、こっちにも損はないやな」

まんまるい目で、沼田を見上げていたタカヤが、急に足をばたつかせた。

「やだやだ、やだぁ!」
「おいおい、どうしたんだよ、タカヤ」
「俺、ここにいたい。沼田さんと一緒にいたいよう」


ぎょっと、した。

どう考えても、沼田はタカヤに優しくしてやっているとは思わない。

気まぐれに殴って、コカイン漬にして、使い捨ての売人扱いで。

たまに、気が向いたときだけ、頭を撫でてやって、飯を食わせてやるくらいだ。


たったそれだけのことが、タカヤにとっては、離れがたいくらいの温もりなのか。