「ぎん、いろ……」



やっと出た言葉が震える。


名前なんて知らない。


私はこの男のことを何にも知らない。



‘‘灯”と登録された電話番号。


LUCEのトップ。



私はそれだけしか知らないんだ。




呆然と銀色を見ていると、暴れていた樹里がピタリ、動きを止めた。



シーンと静かになった空間。



突然大人しくなったことに驚いて、銀色から視線を移して樹里を見ると、泣きそうな顔と目が合った。



岳さんがそんな樹里を見て抑えていた手を離すと、他の男達も手を離したその瞬間、樹里が私の方に駆け寄ってきた。



そして、私の手を握ると。



「シロ、ごめん、ごめんね……」


「……何で謝るの?」


「僕のせいで、」



樹里のせい?


何のことかさっぱりわからない。