「開けるわよ」
そう言って、私の返事も聞かずに開けられたドア。
ビシッとしたスーツ姿に綺麗に纏められた髪型、仕事人間のお母さんらしい格好。
久しぶりに見たその顔は相変わらず、キリッとしている。
「あなた、電話した時ぐらい出なさいよ。何のために買ったと思ってるの」
2人が勝手に買ったんじゃない、と心の中で悪態をつくも、それを言葉にすることはできない。
「ごめん、なさい」
「今度からはちゃんと出なさいよ」
返事はしなかった。
「ああ、そうだ。私、今日休みだから」
「え?」
「久しぶりに休みが取れたのよ」
「そ、なんだ」
タイミングが悪すぎる。
これじゃあ、家にはいられない。