あの男から電話がかかってきたのはその日の夜だった。
部屋で過ごしていると、スマホから音楽が流れ出して見てみると、ディスプレイに‘‘灯”と表示されて、無意識に眉根が寄る。
絶対、出てやらない。
プイ、と無視をして放置を決め込む。
〜♪〜♪〜♪
うるさい。
〜♪〜♪〜♪
ほんと、何。
〜♪〜♪〜♪
早く切ってほしいんだけど。
〜♪〜♪〜♪
「ああっ、もう!」
鳴り続ける音楽に嫌気がさし、反射的に掴んで出てしまった。
「っるさい!」
『へえ…』
電話口から聞こえる低い声に一瞬ゾクリとなった。
『お前、第一声がいつも生意気なんだよ』
明らかに怒りを含んだ声。
『かけたら出ろっつっただろ』
思わず低い声に固まってしまったけど我に返って、しまった、となった。
絶対関わらないし、出ないって決めたのに。
イライラしすぎて一瞬そのことを忘れてしまっていた。