車が完全に見えなくなった後、公園のベンチに近づく。
すると、今まで忘れようとしていたことを思い出してしまって顔を歪める。
まだあの時の感触が鮮明に残っていて、おでこをゴシゴシとさする。
あの男の顔を思い出すだけでも、嫌気がさしてくる。
あんな奴、もう二度と関りたくない。
そう思いながら、ベンチに腰掛ける。
いつもの公園。
日が沈むのがだんだん遅くなっているせいか、まだ空は明るい。
夜以外でこの公園にいるのは久しぶりだ。
2人に貰ったプレゼントの淡い水色のラッピングを丁寧に外していく。
「……」
雑貨屋で見ていた白いうさぎが私の目の前に現れる。
小さい頃、これと似たうさぎのぬいぐるみを見て、欲しくて欲しくて仕方なかった。
小さな体で必死に抱えておねだりしたぬいぐるみ。
でも、やっぱり買ってもらえなくて。
ふわふわの白い毛を撫でる。
柔らかい。
今はもう幼い自分じゃないから、あの時のように欲しいという気持ちはなかったし、
「……と」
私の手から少しだけはみ出すこれは、あの時より小さくて違うものだけど、
「……ありがとう」
2人がこの白いうさぎをくれたおかげで、まるで幼い頃の自分が救われたような気がしたんだ。