「さむ……」
ビュウーッと冷たい風が吹いてきて、肩をすぼめる。
あの男と出会ったあの日から3ヶ月。
冬が終わりに近づいているけれど、まだ肌寒いことには変わりない。
でも、吐く息はもう白くない。
相変わらず夜のこの公園は誰もいなくて、街灯だけがベンチに座る自分を照らしていた。
「もうすぐ春か……」
また、桜の咲く季節がやって来る。
ああ、高校にも行かなきゃな……。
面倒くさ……。
「キャハハ、でさー」
「お前それマジでやべえよ」
突然公園の外から聞こえた声に、ゆっくりと顔を向けると、カップルなのかは知らないけど男女が楽しそうに歩いていた。
もうすぐ10時になる。
彼女でも送っていってるのかな、と考える。
ジッと通り過ぎるカップルを見ていると、男に隠れて見えなかった女の姿が現れた。
首に巻かれた赤いマフラーに目が行く。
と同時に、あの男のことを思い出した。