男の首に巻いているマフラーに目がいく。
マフラーの色は赤。
「……似合わな」
ボソッと呟いた言葉が聞こえていたのか、あ?と声を上げた男。
「……黒のがいい」
銀色に映えるのは黒や濃い青。
コントラストが高ければ高いほど色が映える。
「……やるよ」
そんな私の言葉に何を思ったのか、いきなりマフラーを外して差し出された。
「……は?」
「お前の方が似合うだろ」
「……」
「それにこれ、貰い物だし別にいらねえ。寒いから仕方なくしてただけだ」
……尚更いらないし。
「……」
「しゃーねー」
ふいっと顔を背けた私に男はハア、と息を吐き、
「え、ちょっ!やめてよ!」
「黙ってろ」
無理矢理首にマフラーを巻こうとされ、慌てて抵抗するけど、その甲斐もなく。
「……」
「似合ってんぞ」
「……るさい」
皮肉にも首に巻かれた赤いマフラーのおかげで、さっきよりはほんの少しだけ暖かい。