銀色の彼



「わー!卵焼き美味しそう!ちょうだい!」



目の前に広げたお弁当から、ヒョイッと素早い動作で目の前にいる人物の箸が卵焼きを取って行った。



私の卵焼きが攫われた人物の口に運ばれて食べられるのを見て、口を開く。



「……うざ」


「女の子がそんな言葉使ったらダメだよー」




ゴクン、と卵焼きを食べて、私に注意するのは樹里。



ていうか、なんで私がこの男とお弁当食べてるのかが今でもわからない。




遡るは一週間前。



入学式の次の日、学校に来て席に着くと、



「おはよう!」


「……」



どこから現れたのか、目の前でニコニコと笑みを浮かべる可愛い顔立ちの男。


昨日会った男だ。


名前は……忘れた。



「昨日も言ったけど、僕、樹里。よろしくね」




ああ、そう、樹里だ。


っていうか、同じクラスだったんだ。



「ねえ、今度こそ名前教えて?」


「……」


「また無視。いいもん、クラス名簿見るから。えーと……」



いつの間にそんな物を持っていたのか、クラス名簿を開いて確認している樹里。