少しの間、笑顔で笑っていた樹里だけど、
「でも…」
ゴゴゴゴと樹里の後ろから黒いオーラが立ち込める。
「水ぶっかけるのはありえないよね」
ニコッと可愛らしく笑った。
笑ったはずなのに、黒いオーラが見えるのは気のせいだろうか。
「しかも、そのせいで熱まで出させて」
「ああ、熱はそれが原因じゃないから」
熱が上がったのはそれもあるかもだけど。
「え?そうなの?」
「うん」
コクリと頷く。
「まあ、そうだとしても一発締めとかないと気が済まないな」
ボキボキと首に手を当てて鳴らす樹里はそうとうご立腹らしい。
床に散らばったガラスの破片を見て、樹里を本気で怒らせないようにしようと心に誓った。
「制裁を、」
今まで黙って話を聞いていた男の声が部屋に響いた。
それだけで部屋の空気が張り詰めて、重くなる。
それだけ影響力のある男なんだろう。