銀色の彼




[樹里side]



「変な女だな……」



すぐ傍で呟かれた言葉に同意してしまう。



視線の先の小さな背中を見ていると、胸ぐらいの長さのストレートの黒髪が、時折風で舞っていた。



「ねえ、岳(ガク)」


と、隣にいる赤髪の男に声をかけると、ん?と返事が返ってきた。



「あの子、僕らのこと知らなかったっぽいね」




この高校に入ってくる子なら必然的に知っていること。



なのに、彼女は僕達の顔を見てもまるで気にも止めずに、ましてや、声をかけて「興味ないから」って返ってきたのは予想外。




僕達のことを誰かわかって避けて通る人ならいるけど、あの子の顔は明らかに僕達のことを知ってて避けたわけではなかった。




「確かにそうだな」




隣の岳も不思議そうに呟く。




なんか……




ニヤリ、と笑みを浮かべる。




あの子、面白そう!




「あの子、何組かなあ」


「俺に聞かれてもわかんねえよ」


「だよね」


「おい、まさか……」


「そのまさか」




岳が面倒くさそうな顔をしたけれど気にしない。