それは雪の降る冬のことだった。
「……何してんの?」
吐く息が白色になるのが面白くて、何度も息を吐いていると誰かに声をかけられた。
こんな凍えるように寒い夜の公園で、私以外に人がいることに驚きつつ、ゆっくりと視線を上げる。
私が座っているベンチの横に立った古い錆びれた街灯が、声の主の顔を照らしていて。
最初に目についたのは銀色。
髪の毛が銀色で、少しだけ雪が頭に乗っていた。
その次は、整った端整な顔。
銀髪でも違和感がないほどの綺麗な顔立ちをジッと見つめる。
「何…?」
見つめすぎたのか、そんな私に面白そうに少しだけ笑われる。
「……」
返事をせずに視線を男から外し、また前を見る。
ハアー。
息を吐くと白色に変わり、消えていく。
「またそれ。さっきからやってるけどそんなに面白えの?」
「……」
さっきからって、いつから見てたんだろう。
男が私の目の前に来て、しゃがむ。
「お前、いくつ?」
「……」
「名前は?」
「……」
「無視かよ」
ハッと笑った男の顔をジッと見つめる。