*一馬Side*

教室の端っこでたそがれる女子。

ルックスは悪くないし、頭もいいのに

人との関わりを持たない彼女。

「ねえ。アイツ誰?」

たまたま絡んできた女子に聞いてみた。

「アイツ?ああ。大原さんね。」

「大原?」

「うん。大原梓紗(おおはら あずさ)。みんなから結構嫌われてるよ。」

「え?なんで?ルックスとか悪くねえじゃん。」

「一馬くん、噂知らないの?」

「噂?」

噂しか入ってこない俺に大原梓紗の噂なんて全く入ってこなかったんだ。

「うん。お父さんリストラして、借金置いて出てったんだって。

それにお母さんが去年亡くなって一人で借金抱えてるらしいよ。

しかも男遊びが激しくて、何十人と寝たってさ。」

「アイツ1人暮らしなの?」

「そうだよ。祖父母は遠くにいるから会いに行けないんだって。

バイトも掛け持ちってさ。」

「アイツ、可哀想だな。」

「一馬くん、やめなよ。汚れるよ。」

「だからこそ面白そうじゃん。興味あるわ。アイツ。」

俺は大原梓紗を追った。

いつも出ていく総合の時間に。

着いたのは屋上。

空をぼーっと眺める一人の女子。

俺は彼女の顔をのぞきこんだ。