延喜グラウンドに行く途中に、阿方貝塚史跡公園がある。慎平たちは、阿方公園と呼んでいる。




慎平は、ここで、今治の祭である、「おんまく」の後に、孝之と同級生の女子二人の四人で花火をしたことがある。




話したこともない女子二人と花火をしても、面白くも何ともなく、ただ、孝之は、二人の女子と小学校も同じで、仲が良く、慎平は、完全に孤立してしまった。




それを気の毒に思ってか、「慎平君って、サッカー部だよね?」と声をかけてくれた女の子がいる。名前は、覚えていないが、確か、椎名……みたいな名前だったはずだ。




その椎名みたいな名前の子と線香花火をしたのだが、結局、そこで何を話したのか、覚えていない。どうやって帰ったのかも、遅く帰ってきて、母親に怒られたのか、怒られなかったのかも覚えていない。ついでに言うと、その場所に里中がいたような、いなかったような、覚えていない。




あとは、ソフトボールをここでしたこともある。というのも、元々、延喜グラウンドを使う予定だったのだが、自転車で坂道を上ると、野球の試合か何かをしていて、使えないとわかり、それで降りてきたところにある、阿方公園でしようということになった。




そこには、これまた孝之がいて、しかも、この孝之が投げだソフトボールが公園沿いの道を走っていた赤い車に当たり、怒られるんじゃないかとビクビクしたが、結局、車は何事もなく、延喜グラウンドの方へ走り去って行った。




慎平には、この阿方公園でいい思い出がない。




そんなことも知らない京子は、「どうせなら、寄っていく?」と慎平に提案した。




ここまでの話を京子に説明していると、阿方公園を過ぎてしまうので、「ここではいい思い出がない」とだけ言った。




すると、京子は、慎平のハンドルを取り、阿方公園の駐車場に無理矢理突っ込んだ。




「ばっ! 何すんだよ!」




すると、ハンドルを握ったまま、慎平を上目遣いで、「いい思い出ないんなら、一緒に作ろ?」と言ってきたこの女性、名前を松山 京子と言う。




慎平の中学の同級生であり、慎平から告白されたことがある人である。