しかしふとその横を見ると、無反応でパンを食べている結斗がいた
彼はいつもなら
「咲夜はどんな姿でも可愛いと思うよ」
だとか言って、この手のいたずらを面白がるのだが.....
結斗らしくないな.....
パンを配り終えた景は、なんとなく不思議に思いながらこんなこともあるのだろうと自分の席に着く
しかし暫くして一つ目のロールパンを食べ終えた結斗はパンパンと手を払うと、未だに一旦木綿姿でテーブルに乗っている咲夜を見て
「君、いつまでそうしてる気?」
と神妙な面持ちで訪ねた
「へ.....」
「確か昨日の夜もその姿でリビングにいたよね」
.....昨日の夜も
その姿でリビングに.....?
景は結斗の言葉に一瞬固まる
しかし混乱した頭でパンにジャムを塗りながら、景は雑談を聞く振りをして会話に耳を傾けた
「あれ結斗、俺のこと気づいてた?」
「気づいてなかったよ。今君を見て、そういえば昨日の夜、そこのソファに白い布が掛かってたなって思い出しただけ」
て、ことは
あの会話を咲夜は聞いていた.....?
景がチラリとルークを見ると、彼は無表情でフルーツを食べているところだった
彼も今、昨日のあの会話を咲夜に聞かれたことに気づいたのだ
おそらく
これは咲夜なりの、「ごめん、聞いちゃった」の合図



