そのころ
結斗は鈴菜とタッグを組み、共に校舎内を走り回っていた
「我ながら奇妙な組み合わせやと思うわ」
僅かに息を切らして教室一つ一つを確かめていく鈴菜が、背後でそう笑う
結斗は反対側の教室の扉を開けながら「同じく」と呟いた
もちろん、鈴菜が景の親友だということは彼女の話から聞いている
会ったこともあるし、景にとってどちらも大切な人
実際お互いを認識している関係ではあったはずだ
しかし、ちゃんと会話をするのは初めてに等しい
いつも自分に話しかけてくれる女の子はとは少し違う性格の鈴菜
下心をもった女の子は逆に相手にしやすいけれど、彼女みたいなサバサバした女子とはあまり関わったことがなかった
「でも君と同じクラスになれて、話せて嬉しいよ」
いつもの自分なら何のためらいもなく言える言葉も、このときだけは胸につっかえながら口から出る
彼女がそんな言葉では喜ばないことも、ときめきもしないことも分かっていた
この類の子には、自分の甘い言葉は効かないのだ
「うちも。景がよく君らの話するから、君とは仲良くなってみたかったしな」
「へぇ、景ちゃんは何か俺のこと言ってた?」
結斗は教室の中を覗いて誰も中にいないことを確認してから鈴菜を振り返る
彼女は視線だけで上の階へ行くことを促しながら
「せやなぁ、景はよく伊吹くんのことを褒めてんなぁ」
と嬉しそうに言った
「えっ、褒められてるの?」



